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えほん調剤薬局
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えほん調剤薬局

architecture_2020

福岡県大川市に出来た、えほんを読める図書館のような調剤薬局である。患者さんが待ち時間に読んだり、近所の方々がふらっと立ち寄って読める場である。子供はもちろん、大人も童心に戻って絵本を楽しめる空間だ。日本でも有数の家具産地でもあるこの土地で、地域の人々に愛され、親しんでもらうために親子の交流の場・地域の交流の場としてのシンボルとなるように設計した。

急激なスマートフォンの普及により親子の対話は減り、コミュニケーションが薄れてきている現代、さらには夫婦共働きが故に子供を保育園に預けたりと、親子の触れ合う時間が減少している家庭も少なくはない。

我々は絵本に可能性を感じている。

絵本は心を育てたり感情や創造力を豊かにするものであり、幼い頃に読み聞かせてもらった絵本というのは大人になってからも思い出に残っているものである。しかし、以前に比べて子供たちが絵本を読んだり、絵本の読み聞かせの機会が減ってきているように思う。

この薬局の近くにある耳鼻咽喉科には幼い子供の患者も多く、親子がそろって訪れる薬局となるため、少しでも絵本と触れ合う機会を持ってほしいという思いからスタートしたプロジェクトとなった。病気の子供たちは心も体も弱っている状態で、注射をしたり、苦い薬を飲んだり、痛かったり辛いことが多く、どうしても治療にマイナスイメージを持ってしまうだろう。そんな子供たちが治療の最後に少しでも楽しみにしてくれるような、心が元気になる源の「絵本」の調剤薬局を目指した。

建物のボリュームは小さいが、地域の人々に愛され、親しんでもらうために親子の交流の場・地域の交流の場としてのシンボルとなるように、見る者のすべてが覚えやすい色合いと形状にした。絵本の中に出てきそうで、子供でも一目見たら覚えられるようなシンプルで印象的な建物。インテリアも外観と連動するようなデザインとし、ジューンベリーの木の見える絵本のスペースを象徴するような空間としている。奥には外観と同じ形の小さな家が建っており、そこにはたくさんの絵本が並んでいる。楽しい絵本、悲しい絵本、夢のある絵本、想像が膨らむ絵本、これからどんな絵本との出会いが待っているか、どの絵本から読もうかワクワクするだろう。天井は高く開放的な空間に、建具や什器は温かみのある木材を使い、壁は元気な明るい色を選んだ。絵本の本棚の丸棒は位置を自由に変えることができ、表紙面を見せるブックスタンドにもなり、本を整理できるブックエンドにもなる。中庭から差し込んでくる光は時間の移り変わりを、中庭の植物は季節の移り変わりを感じることができる。

この場所がきっかけで、親子の関係や地域の人々の関係が変わり、ここから新たなストーリーが生まれることを願っている。

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